特殊清掃の値段と費用相場｜間取り別の料金と業者選びのコツ

特殊清掃の値段がいくらかかるのか分からず、見積もりへの不安を抱えていませんか。

費用は間取りだけでなく、発見までの日数や汚染の広がりで大きく変わります。

この記事では、相場の目安から費用負担のルール、保険の活用法、信頼できる業者の見極め方まで解説します。

正しい知識があれば、不当な請求を避け、日常を取り戻す第一歩を踏み出せます。

特殊清掃の費用相場と内訳

特殊清掃の費用は、部屋の広さだけで決まるものではなく、発見までの日数や汚染の広がり方によって大きく変わるという特徴があります。

ここでは、パニック状態でも適正な判断ができるよう、実際の市場データに基づいた料金目安と、なぜその金額になるのかという仕組みを分かりやすく解説します。

相場（1）間取り別の料金目安

特殊清掃の費用は、部屋が広くなるほど消臭作業の範囲が広がるため、料金が高くなる傾向にあります。

以下の表は、遺品整理費用を含まない、純粋な特殊清掃にかかる費用の目安をまとめたものです。

同じ間取りでも金額に幅があるのは、汚れの範囲が部分的か、部屋全体に広がっているかによって作業内容が変わるためです。

間取り	費用相場（下限〜上限）	変動の理由
1K・1R	78,000円 〜 300,000円	汚染範囲が限定的か、全体か
1DK〜3LDK	135,000円 〜 482,000円	部屋数に伴い臭気の拡散範囲が広がる
4DK以上	245,000円 〜 690,000円	床下などの特殊処理が発生する可能性

この表から分かるように、1Kや1Rといった単身者向けの間取りでも、状況によっては30万円近くかかるケースがあります。

また、部屋がゴミで埋め尽くされている「ゴミ屋敷」の状態では、廃棄物の処理費用が加算されるため、さらに数割増しから倍額になる可能性がある点にも注意が必要です。

相場（2）死後経過日数による変動

費用を決定づける最も大きな要因は、亡くなってから発見されるまでの「時間」です。

発見までの時間が長引くほど、ご遺体の状況が悪化し、作業の難易度が上がるため費用が高くなります。

特に気温が高い夏場は、冬場の数週間分に相当する腐敗がわずか数日で進行してしまいます。

発見が遅れてしまった場合は、高額な費用がかかる現実を受け止める必要がありますが、被害を最小限に抑えるためにも、まずは入室を控えて専門業者を待つことが大切です。

相場（3）パック料金の作業範囲

ホームページなどで見かける「孤独死パック」などのセット料金には、作業範囲の確認において注意が必要です。

これらの多くは「一次処理」と呼ばれる、ご遺族や関係者がとりあえず部屋に入室できる状態にするための応急処置のみを指している場合があるからです。

「一次処理」だけでは、壁や床に染み込んだ臭いの根源までは取り除けないことがあります。

完全に元の状態に戻すための「二次処理」が必要な場合、パック料金とは別に追加費用がかかる可能性が高いため、契約前にどこまでの作業が含まれているかを必ず確認してください。

相場（4）リフォーム費用の目安

体液がフローリングの隙間から床下やコンクリート部分まで染み込んでいる場合、表面を掃除するだけでは強烈な臭いを消すことはできません。

このようなケースでは、汚染された床板を剥がしたり、壁紙を張り替えたりするリフォーム工事が不可欠となります。

市場データによると、臭いを完全になくすための「二次処理（完全復旧）」には、8万円から55万円程度の費用がかかり、大規模な工事になると100万円を超えることもあります。

ただし、賃貸物件などで大家さんが加入している保険や、入居者が加入していた家財保険の特約が使えるケースもあります。

相場（5）実際の請求事例

同じような間取りでも、亡くなられた時の状況によって請求額には大きな差が出ます。

ここでは、実際に業者が対応した2つの事例を比較して、どのような違いがあるのかを見ていきます。

このように、発見が早く汚染が布団だけで済めば費用は抑えられますが、床下や建物の基礎部分まで汚染が進むと金額は跳ね上がります。

ネット上の最安値だけを信じるのではなく、自分の状況を正確に見積もってもらうことが、トラブルを避けるためには重要です。

特殊清掃費用の負担者と保険

突然の高額請求に対し、「誰が払うべきなのか」「自分に支払い義務があるのか」と不安を感じるのは当然のことです。

法的には、費用の支払い責任には明確な優先順位が定められています。

ここでは、誰にどの程度の責任があるのかというルールと、費用負担を軽くするための保険について解説します。

負担（1）連帯保証人と相続人の義務

費用の請求先は、法的なルールに基づいて以下の優先順位で決定されます。

まずは自分がどの立場に当てはまるかを確認することが、冷静な対応への第一歩です。

順位	支払い義務者	責任の概要
1	連帯保証人	故人と同等の責任があり、原則として支払いを拒否できません。
2	法定相続人	配偶者や子供など。プラスの財産だけでなく借金も引き継ぎます。
3	物件所有者	上記がいない、または全員が相続放棄をした場合の最終負担者です。

このように、最も責任が重いのは連帯保証人です。

ただし、2020年4月の民法改正により、個人の保証人については「極度額」と呼ばれる支払いの上限額を定めることが義務付けられました。

もし請求を受けた場合は、契約書の日付と上限額の記載を必ず確認してください。

負担（2）物件オーナーの負担範囲

連帯保証人が設定されておらず、親族全員が「相続放棄」を選択した場合、最終的な費用の負担は物件の所有者である大家さんが負うことになります。

「身内に迷惑をかけたくない」という思いから無理をして支払おうとする遺族もいますが、法的には支払い義務が消滅するケースも存在するのです。

大家さんにとっては厳しい現実ですが、遺族が経済的に困窮して共倒れになってしまっては元も子もありません。

道義的な責任を感じる気持ちは分かりますが、ご自身の生活を守るためにも、法的な義務と感情は切り離して考える冷静さが求められます。

負担（3）相続放棄時の支払い義務

故人に多額の借金がある場合などは、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをすることで、清掃費用の支払い義務を免れることができます。

しかし、ここで最も注意すべきなのが「単純承認」という落とし穴です。

これは、故人の財産を少しでも処分してしまうと、借金も含めてすべてを相続したとみなされるルールのことです。

これらの行為は「処分」とみなされるリスクが高いため、相続放棄を検討している場合は絶対に避けてください。

費用を支払う必要がある場合は、自分のお金（私費）で払うか、弁護士に相談するのが安全です。

負担（4）適用可能な保険の種類

高額な費用を全額自己負担する前に、使える保険がないか必ず確認してください。

最近では、賃貸契約時に加入する保険で費用がカバーできるケースが増えています。

業界のデータによると、家財保険に付帯された「原状回復費用の特約」や「孤独死保険」により、最大で30万円から100万円程度の保険金が支払われる商品も存在します。

この確認作業ひとつで、経済的な負担が大幅に軽くなる可能性があります。

依頼から作業完了までの流れ

「まず何をすればいいのか」「いつ部屋を明け渡せるのか」と、先が見えない状況に不安を感じている方も多いでしょう。

現場では、気が動転してしまい、必要な手続きが後回しになってしまうケースも見受けられます。

全体像を把握するだけで、いつどのような判断が必要になるかが明確になり、少し心に余裕が生まれるはずです。

流れ（1）問い合わせから見積もり

まずは専門業者への電話相談から始まります。

「何を話せばいいか分からない」という声も聞かれますが、分かる範囲で状況を伝えれば問題ありません。

ここで重要なのは、必ず現地に来てもらって見積もりを取ることです。

電話だけで安易に金額を確定させる業者は、後から追加請求を行うトラブルの原因になりやすいため注意が必要です。

正確な費用を出すためには、プロが実際に汚れや臭いのレベルを確認する必要があります。

緊急時であっても、以下の手順を踏むことが、結果としてトラブルを防ぐ近道です。

流れ（2）遠方時の鍵の受け渡し

ご遺族が遠方に住んでいる場合、「仕事が休めずすぐに現場に行けない」という悩みは切実です。

そのような場合でも、必ずしも立ち会いが必要なわけではありません。

多くの現場では、管理会社や警察から業者へ鍵を渡してもらい、遺族は現地に行かずに作業を進める方法がとられています。

作業の完了報告についても、現場の写真や動画をメールで送ってもらうことで確認が可能です。

ただし、室内から貴重品を探し出す必要がある場合などは、トラブルを避けるために委任状を用意するか、可能な限り親族の方が立ち会うことをお勧めします。

流れ（3）完全消臭までの期間

管理会社から退去を急かされている場合、「あと何日で作業が終わるのか」は最も気になる点でしょう。

作業にかかる期間は、発見までの日数や汚染の進行具合によって大きく異なります。

実際の事例（ケーススタディ）を元に、作業内容と期間の違いを整理しました。

状況	作業内容	期間の目安（事例）
発見が早い場合（死後3日程度）	汚染物の撤去、短時間の強力消臭（ショックトリートメント）など	比較的短期間で完了する傾向があります。
発見が遅い場合（死後1ヶ月以上）	床や壁の解体工事、高濃度オゾン脱臭機の連続稼働など	オゾン脱臭機を5日間連続で稼働させるなど、数日以上の期間が必要になるケースがあります。

このように、腐敗が進んで臭いが染み込んでいる場合、機械を数日間回し続ける「燻蒸（くんじょう）」という工程が必要になります。

もし賃貸物件の契約期限が迫っている場合は、解体工事や消臭期間を考慮して、一刻も早く業者に相談することが重要です。

失敗しない業者の選び方

実際に現場では、悪徳業者による高額請求や、作業後も臭いが取れないといったトラブルが後を絶ちません。

パニック状態であっても、後で泣き寝入りしないために「優良業者を見極める基準」を持つことが大切です。

ここでは、プロの視点から必ずチェックすべき5つのポイントを解説します。

選び方（1）見積書の明細を確認

多くのトラブル相談で共通しているのが、「一式 〇〇万円」という大雑把な見積書です。

これでは何にいくらかかっているのか全く分からず、後で不当な請求をされても反論できません。

つまり、見積もりの透明性こそが信頼の証なのです。

優良業者は、以下の表のように単価と数量を明確に記載しています。

もし「一式」としか書かれていない見積もりが出されたら、その場での契約は避け、詳細な内訳を出してくれる別の業者を探すことを強くお勧めします。

チェック項目	良い見積もりの記載例	悪い見積もりの記載例
作業費用の内訳	オゾン脱臭機稼働 3日分 〇〇円	特殊清掃作業 一式
処分費用の詳細	汚染畳処分 6枚 〇〇円	処分費 一式

選び方（2）必要な許可証の有無

特殊清掃には、汚染された家財道具や畳などを処分する工程が必ず発生します。

これを適正に行うには、「一般廃棄物収集運搬業」の許可、あるいは許可業者との提携が法律で義務付けられています。

データによると、無許可の業者が回収した遺品を不法投棄する事件も起きており、依頼者が法的責任を問われるリスクさえあります。

また、解体工事を行う場合は「解体工事業登録」も必要です。

ホームページにこれらの許可番号や提携先の記載がない場合は、コンプライアンス（法令遵守）に問題がある可能性が高いため、依頼を見送るのが賢明です。

選び方（3）消臭技術と実績

「市販の消臭剤を撒いたけれど全く効果がなかった」という経験をされた方もいるかもしれません。

死臭の除去は非常に難易度が高く、臭いの元を分子レベルで分解する専門的な機材がなければ不可能です。

業界の基準では、イスラエル製や日本製（パンサーJなど）の最高スペックの業務用オゾン脱臭機を保有しているかが、技術力のひとつの目安になります。

ただし、機材を持っているだけでなく、それを使いこなす「オゾンショックトリートメント（OST法）」と呼ばれる、短時間で強力な脱臭効果を発揮する特殊な技術も不可欠です。

選び方（4）追加請求なしの明言

現場で最も恐れられているのが、作業終了後に「想定より汚れが酷かった」と言われ、当初の倍以上の金額を請求されるケースです。

安い見積もりで契約させ、後から理由をつけて増額するのは悪徳業者の典型的な手口です。

これを防ぐためには、契約の段階で「これ以上の追加料金は発生しないか」を必ず確認してください。

壁の内部など開けてみないと分からない箇所があるのも事実ですが、もし追加作業の可能性があるなら、どのような条件でいくら加算されるのか、事前に書面で取り決めができる業者を選ぶことが、身を守るための絶対条件です。

選び方（5）電話対応の丁寧さ

現場での実感として、技術力のある優良業者は、遺族への配慮を行う「グリーフケア」もしっかり教育されています。

つまり、電話対応の質は、そのまま作業の質や信頼性に直結すると言えます。

質問に対して専門用語を使わず分かりやすく答えてくれるか、遺族の気持ちに寄り添う姿勢があるかを確認してください。

もし電話の時点で威圧感や不信感を感じたら、その直感は正しいことが多いので、別の業者に相談することをお勧めします。

費用を抑えるための注意点

「急な出費で困っているから、少しでも安く済ませたい」と考えるのは当然のことです。

しかし、特殊清掃の現場では、安さだけで業者を選んでしまい、「臭いが取れなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。

結果として再作業が必要になれば、費用はさらに膨らんでしまいます。

注意点（1）格安業者のリスク

表面的な汚れを拭き取るだけの格安業者に依頼すると、床下や壁の内部に染み込んだ臭いの元が残り、数日後に強烈な悪臭が再発することがあります。

こうなると、別の業者に再依頼することになり、解体工事などの追加費用が発生してしまいます。

以下の表は、安易な業者選びが招くコストのリスクを比較したものです。

業者の選び方	作業内容の違い	最終的な費用（リスク）
安さだけで選ぶ	表面的な清掃のみで、臭いの元が残る	再施工が必要になり、当初の約2倍かかる可能性がある
技術で選ぶ	解体や特殊薬剤で根源から完全消臭	一度で完了し、追加費用がかからない

このように、最初の提示額が安くても、結果的に「安物買いの銭失い」になるリスクがあります。

見積もりの金額だけでなく、「完全消臭」ができる技術力があるかをしっかり確認することが、トータルコストを抑える近道です。

注意点（2）相見積もりの重要性

焦っていると、最初に電話がつながった1社だけで決めてしまいがちですが、これは避けるべきです。

特殊清掃には定価がないため、同じ現場でも業者によって数十万円もの金額差が出ることが珍しくありません。

これは、使用する薬剤や機材、廃棄物の処理ルートが業者ごとに異なるためです。

適正価格を見極めるためにも、最低でも2〜3社から見積もりを取りましょう。

ただし、あまり多くの業者を呼びすぎると対応だけで疲れてしまうため、電話対応が良い業者に絞って比較するのが賢明です。

注意点（3）早期依頼で被害を防ぐ

「気持ちの整理がついてから」と依頼を先延ばしにすることは、経済的な負担を増やす原因になります。

ご遺体の発見から時間が経つほど、体液や血液は建材の奥深くまで染み込んでいきます。

特に夏場は腐敗の進行が早く、わずか数日で床の解体や大規模なリフォーム工事が必要な状態まで悪化してしまいます。

被害を最小限に食い止め、費用を安く抑えるためには、迷わず一刻も早くプロに相談することが最も効果的な節約術です。

注意点（4）一式見積もりの確認

見積書に「特殊清掃 一式」としか記載されていない場合は、契約前に詳細を確認する必要があります。

作業範囲が曖昧なままだと、作業後に「この作業は別料金です」と追加請求されるトラブルになりかねません。

本来、適正な見積もりであれば、薬剤費や人件費、廃棄物の処分費などが細かく記載されているはずです。

まとめ

特殊清掃の値段は間取りだけでなく、発見までの日数や汚染状況によって大きく変動します。

費用負担については連帯保証人や相続人に優先順位があり、家財保険の特約で負担を軽減できる可能性もあるため、必ず確認してください。

業者を選ぶ際は、見積もり内訳の明確さや許可証の有無、追加請求がないかをチェックすることが重要です。

格安業者に飛びつくと再施工で費用が倍増するリスクがあります。