特殊清掃の料金と費用内訳を解説｜保険活用で負担を減らす方法

「ネットで見た金額と実際の見積もりが全然違う」「悪徳業者にぼったくられないか心配」——そんな声をよく耳にします。

実は、費用は部屋の広さだけでなく、発見までの日数や汚染の程度によって大きく変動するため、相場を知らないまま契約すると損をしてしまうことも。

適正価格を把握すれば、焦りの中でも冷静に業者を見極められるようになります。

特殊清掃の料金相場と費用の内訳

突然の不幸に直面し、頭が真っ白になってしまうのは無理もありません。

まずは落ち着いて、費用の全体像を確認しましょう。

特殊清掃の料金は、一般的な掃除のように「部屋の広さ」だけで決まるものではありません。

「高いのか安いのか」を判断するための基準として、まずは一般的な相場の目安を見ていきましょう。

相場（1）間取り別の料金目安一覧表

特殊清掃の料金には、同じ間取りでも非常に大きな金額の幅があります。

これは、単にゴミを片付けるだけなのか、それとも床の解体工事まで必要なのかによって、作業内容が大きく変わるためです。

以下の表は、間取りごとの料金目安をまとめたものです。

部屋の間取り	料金の目安	金額の幅が出る理由
ワンルーム・1K	3万円 〜 30万円	発見が早く表面の掃除で済む場合は安く、解体や遺品整理を含むと高くなります。
1DK・2DK	7万円 〜 50万円	部屋数が増えると、消臭機材の稼働時間や薬剤の量が増えるため料金が上がります。
3LDK以上	18万円 〜 100万円以上	広範囲の消臭に加え、家財道具の撤去費用などが大きく影響します。

インターネット上には「3万円から」という安い金額の広告もありますが、これは最も軽い症状の場合です。

ご自身の状況が深刻な場合は、表の上限に近い金額がかかる可能性も考えておくことが、後で慌てないためのポイントです。

相場（2）消臭・消毒・遺品整理の単価

業者から提示された見積書に「特殊清掃一式」とだけ書かれていて、不安になる方は少なくありません。

適正価格かどうかを見極めるためには、作業ごとの単価を知っておくことが大切です。

主な作業の料金目安は以下の通りです。

一つひとつの単価は数万円でも、これらを積み上げると合計金額は大きくなります。

もし見積書に合計金額しか書かれていない場合は、必ず「何にいくらかかっているのか」という内訳を確認するようにしてください。

相場（3）単体プランとパック料金の違い

特殊清掃の依頼方法には、大きく分けて「単体プラン」と「パック料金」の2種類があります。

状況に合わせて最適な方を選ぶことで、無駄な出費を抑えられる場合があります。

賃貸物件などで完全に元の状態に戻す必要があるなら、結果的にパックプランの方が追加費用を抑えられることもあります。

相場（4）原状回復リフォームの追加費用

清掃だけで全て解決すれば良いのですが、残念ながらそうはいかないケースもあります。

特に発見が遅れた場合、体液が床板を通り越して、建物の基礎部分にまで染み込んでいることがあります。

こうなると、表面をどれだけきれいに掃除しても、後から臭いが復活してしまう「臭い戻り」という現象が起きてしまいます。

この「臭い戻り」を完全に防ぐためには、汚れた床や壁を解体したり、臭いを封じ込める特殊な塗料を塗る「防臭コーティング」といった工事が必要になります。

実際に「清掃後にまた臭いが出てトラブルになった」という事例もあるため、清掃費とは別に、こうした工事費用が必要になる可能性も予算に入れておくことを強くお勧めします。

特殊清掃の料金が高額になる変動要因

特殊清掃の見積もりを見て、「なぜこんなに金額に差が出るのか」と不安になる方は少なくありません。

部屋の広さが同じでも、現場の状況によって料金が数倍、時には数十倍にも跳ね上がることがあります。

これは、単に表面を掃除するだけでなく、建物の見えない部分まで修復する「工事」が必要になるかどうかが大きく関わっているからです。

ここでは、料金が高額になってしまう具体的な4つのケースについて、その理由を分かりやすく解説します。

要因（1）発見までの日数と床下汚染

発見されるまでの期間が長くなると、ご遺体から出た体液が床の表面を通り越し、床下の木材やさらにその下のコンクリート部分（スラブと呼ばれる基礎部分）にまで染み込んでしまうことがあります。

こうなると、表面を拭き取るだけの清掃では解決できません。

床を剥がして汚染された部分を解体・撤去する工事が必要になるため、その分費用が加算されます。

要因（2）ゴミ屋敷やペット飼育の有無

現場では、足の踏み場もないほどのゴミ屋敷状態で発見されるケースも珍しくありません。

このような場合、通常の清掃費とは別に、大量のゴミを運び出して処分するための費用が発生します。

調査データによると、ゴミの撤去費用が重なり、総額が150万円を超える事例も報告されています。

また、犬や猫などのペットを多頭飼育していた場合も注意が必要です。

排泄物の臭いが部屋の壁や床の奥深くまで染み付いていることが多く、通常の消臭作業に加えて、強力な薬剤を大量に使用したり、作業工程が増えたりすることで料金が高くなる傾向があります。

要因（3）浴室・トイレなど作業困難な場所

浴室やトイレなど、狭くて複雑な場所で亡くなられた場合、作業の難易度は格段に上がります。

特に浴室では、体液が浴槽の下や排水管の隙間に入り込んでしまうことがよくあります。

これらを洗浄するには、浴槽を取り外したり、専用の機材を使ったりする必要があるため、費用がかさみます。

一般的な料金の目安は以下の通りです。

要因（4）緊急対応や深夜作業の割増

「近隣から異臭の苦情が来ているので、今すぐ何とかしてほしい」という緊急の依頼も多くあります。

こうした急ぎの対応には、通常料金に加えて割増料金が発生することが一般的です。

まずは感染症のリスクを抑え、入室できる状態にするための「一次処理（応急処置）」だけでも、以下のような費用がかかります。

費用の種類	金額の目安	費用がかかる理由
一次処理費用（初期費用）	8万円 〜 15万円程度	作業員のスケジュールを急遽確保する費用や、感染症の危険がある現場に入るためのリスク手当が含まれます。

「少しでも安くしたい」と考えるのは当然ですが、放置すればするほど臭いや害虫被害が拡大し、結果的に修復費用が高くなってしまいます。

まずは緊急対応だけでも早めに依頼することが、被害を最小限に食い止めるための近道です。

目的別に見る清掃範囲と費用削減

現場では「とにかく費用を少しでも安く抑えたい」という切実なご相談を毎日のようにいただきます。

しかし、全ての現場で高額なリフォームや完全な消臭が必要なわけではありません。

物件を「その後どう活用するか」という最終的なゴールによって、必要な作業とカットできる費用が大きく変わってくるからです。

ここでは、解体・賃貸・売却という3つの目的別に、無駄な出費を防ぎつつ、必要なラインを見極めるための清掃範囲について解説します。

目的（1）解体予定なら表面清掃のみ

「建物が古いので、これを機に取り壊して更地にしたい」という場合、次の人が住むわけではないため、臭いを完全に消す作業や内装を綺麗にするリフォーム費用は不要です。

このケースで必要なのは、解体業者が安全に入室できるように、感染症のリスクを取り除く「一次処理」だけです。

実際に、余計なオプション作業を省くことで、数十万円単位の費用を削減できた事例もあります。

物件の活用目的ごとの必要な作業レベルは以下の表の通りです。

物件の活用目的	必要な作業の範囲	費用の考え方
解体・取り壊し予定	一次処理のみ（汚染物の除去・除菌）	解体業者の安全が確保できれば良いため、費用を最小限に抑えられます。
賃貸として継続	完全消臭 ＋ リフォーム（臭いの根絶）	次の入居者のために、臭い戻りを防ぐ徹底的な対策が必要です。
売却する	徹底的な原状回復（見た目と臭いの改善）	物件の第一印象を良くし、査定額が下がるのを防ぐ投資が必要です。

目的（2）賃貸継続は完全消臭が必須

賃貸オーナー様からは「早く次の入居者を入れないと家賃収入が途絶えてしまう」という焦りの声を聞くことがあります。

賃貸経営を続ける場合、単に目に見える汚れを落とすだけでなく、次の入居者が不快に感じないレベルまでの「完全消臭」が絶対条件となります。

中途半端な清掃で済ませると、床下に染み込んだ体液から「臭い戻り（時間が経ってから臭いが復活すること）」が発生し、入居後のクレームや再工事につながるリスクがあるからです。

初期費用はかかりますが、オゾン脱臭や床下リフォームまで徹底することが、将来の収益を守る近道です。

目的（3）売却時は資産価値維持を優先

ご遺族からは「事故物件になってしまった家が、本当に売れるのか不安だ」という悩みを頻繁に耳にします。

不動産売却において、物件の査定額を大きく左右するのは「見た目」と「臭い」です。

つまり、少しでも高く売却するためには、表面的な清掃だけでなく、臭いの根源を断つ徹底的な「原状回復（元の状態に戻すこと）」が、資産価値を守るための重要な投資になります。

実際に、綺麗にリフォームされていれば、事故物件であっても相場に近い価格で取引される可能性があります。

不動産会社とも連携できる実績のある業者を選ぶことが大切です。

費用の支払い義務と保険活用の方法

「突然、数百万円もの請求が来るかもしれない」という不安は、ご遺族にとって精神的に大きな負担となります。

ここでは、法律上の支払い義務が誰にあるのかという順位と、経済的な負担を劇的に軽くするための「保険」の活用方法について、分かりやすく解説します。

方法（1）親族・連帯保証人の負担義務

現場では「長い間会っていない親戚のことなのに、なぜ自分が支払わなければならないのか」という戸惑いの声をよく耳にします。

しかし、法律には明確な支払い義務の優先順位が決まっています。

まずは賃貸契約書を確認し、誰が「連帯保証人」になっているかを確認してください。

支払い義務の順位	対象者	責任の内容
1位（最優先）	連帯保証人	故人に代わって部屋を元の状態に戻す義務（原状回復義務）を負うため、支払いの責任が最も重くなります。
2位	法定相続人	連帯保証人がいない場合、配偶者や子供などがその義務を引き継ぎます。
3位（最終的）	物件オーナー	連帯保証人がおらず、相続人全員が相続放棄をした場合、オーナーが負担することになります。

もしあなたが連帯保証人になっていれば、支払い義務を避けることは難しくなります。

一方で、単なる親族（法定相続人）であれば、相続放棄によって支払いを免れることができる場合もあります。

方法（2）孤独死保険・火災保険の活用

「保険のおかげで、自分でお金を出すことなく解決できた」という事例は、現場でも実際に増えています。

最近では「孤独死保険」という専用の保険や、火災保険に付いている特別なオプション（特約）によって、費用がカバーされるケースが多いからです。

データによると、原状回復費用として最大100万円から300万円程度が補償されるプランが一般的です。

諦めて自腹を切る前に、まずは手元の保険証券を確認するか、保険会社に問い合わせてみることを強くお勧めします。

方法（3）相続放棄時の費用と遺品整理

「部屋を片付けたせいで、故人の借金まで背負うことになってしまった」という失敗談は、後を絶ちません。

法律には「単純承認」というルールがあります。

これは、「遺品整理や清掃を行う＝故人の財産を引き継ぐ意思がある」とみなされる仕組みのことです。

もし少しでも部屋の物を動かしたり処分したりすると、この「単純承認」が成立してしまい、後から「やっぱり借金があるので相続放棄します」と言えなくなるリスクがあります。

方法（4）賃貸オーナーが負担するケース

賃貸オーナー様からは「連帯保証人もおらず、親族も全員相続放棄してしまい、誰にも請求できない」という悲痛な叫びを聞くことがあります。

法的に請求できる相手がいなくなった場合、最終的な清掃費用やリフォーム代は、物件の持ち主であるオーナー様が負担しなければならないのが現実です。

こうした「持ち出し（自腹での支払い）」のリスクを避けるため、事前にオーナー様自身で孤独死保険に加入するケースが増えています。

万が一の事態に備えて、保険の加入状況を見直しておくことが、大切な資産を守るための重要な防衛策となります。

悪徳業者を避ける優良業者の選び方

精神的に追い詰められているご遺族の足元を見て、法外な金額を請求する悪質な業者が存在するのは、悲しいことですが事実です。

実際に「契約するまで帰らないと言われた」「作業後に見積もりの倍額を請求された」といったトラブルが後を絶ちません。

選び方（1）見積書の内訳と追加請求

トラブルで最も多いのが、料金に関するものです。

悪徳業者は、最初の見積もりでは安く見せかけ、作業が終わってから「想定外の汚れがあった」などと言って高額な追加料金を請求してきます。

こうした被害を防ぐためには、見積書に「何にいくらかかるのか」が細かく書かれているかを確認することが重要です。

以下の表を参考に、手元の見積書が安全かどうかチェックしてみてください。

チェック項目	危険な見積もりの特徴（要注意）	優良な見積もりの特徴（安心）
費用の内訳	「特殊清掃一式 30万円」とだけ書かれていて、詳細が不明。	「薬剤費」「人件費」「処分費」などが細かく書かれている。
追加料金の説明	説明が一切ない。または「やってみないと分からない」と曖昧。	「床下の解体が必要な場合は別途〇〇円」など、条件が明記されている。

選び方（2）完全消臭の実績と保有機材

「清掃してもらったはずなのに、数日後にまた臭いがしてきた」という失敗は、技術力のない業者に依頼した場合によく起こります。

市販の消臭スプレーのような方法では、染み付いた死臭を消すことはできません。

プロの業者は、「オゾンショックトリートメント（OST法）」と呼ばれる、強力な脱臭機を使って臭いの成分を化学的に分解する技術を持っています。

業者のホームページを見て、業務用のオゾン脱臭機を持っているか、過去に「完全消臭」の実績があるかを確認することが大切です。

選び方（3）解体・産廃許可の保有確認

片付けた遺品やゴミが、山林などに不法投棄されてしまう事件も起きています。

これは、家庭から出るゴミを運ぶために必要な「一般廃棄物収集運搬業」という許可を持っていない業者が、違法に処分しているためです。

もし不法投棄が発覚すると、依頼した側も責任を問われる可能性があります。

また、床や壁を剥がす作業には「解体工事業」の登録も必要です。

正規の許可を持っているか、あるいは許可を持っている業者と提携しているかを必ず確認してください。

選び方（4）近隣への配慮と秘密厳守

「近所の人に、ここで孤独死があったことを知られたくない」というのは、ご遺族にとって切実な願いです。

優良な業者は、社名の入っていないトラックを使ったり、作業員が目立たない服装で訪問したりするなど、プライバシーを守るための徹底した配慮をしてくれます。

作業の腕だけでなく、こうした「気遣い」ができるかどうかが、信頼できる業者かどうかの分かれ目になります。

見積もりの段階で、近隣への対応について相談に乗ってくれるかどうかも確認しましょう。

選び方（5）格安業者に潜む作業不備

「他社より10万円も安いから」という理由だけで契約するのは危険です。

特殊清掃には、強力な薬剤や、感染症を防ぐための防護服、そして人件費など、どうしても必要な原価があります。

極端に安い場合、必要な消毒作業を省いていたり、経験の浅いアルバイトだけで作業していたりする可能性があります。

「なぜ安いのか」という理由が明確でない場合は、手抜き作業のリスクがあることを疑ってかかる必要があります。

まとめ

特殊清掃にかかる料金は、間取りだけでなく発見までの日数や汚染の程度によって大きく変動します。

ワンルームでも3万円から30万円以上と幅があり、床下への浸透がある場合は解体工事費用が加算されることも。

費用を抑えるには、物件の活用目的に合わせて必要な作業範囲を見極めることが大切です。

孤独死保険や火災保険の特約が適用できれば、自己負担を大幅に軽減できる可能性もあります。

焦らず複数社から見積もりを取り、適正価格で信頼できる業者に依頼しましょう。