残置物撤去の費用・期間・業者選びのポイントを初心者向けに解説

相場がわからないまま依頼し、高額請求や不法投棄といった悪徳業者トラブルに巻き込まれる被害は後を絶ちません。

本記事では、費用相場の内訳から信頼できる業者の選び方、コストを抑える具体策まで徹底解説します。

残置物撤去の費用相場と内訳

提示された見積もりが適正なのか、それとも高すぎるのかを判断できず、業者選びで立ち止まってしまう方は非常に多いです。

ここでは、安心して依頼するために知っておくべき費用の目安と、その金額が決まる仕組みについて、初めての方にも分かりやすく解説します。

費用（1）間取り・荷物量別の相場一覧

残置物撤去の費用は、部屋の広さによってある程度の目安が決まっています。

例えば、一人暮らし向けの1Kなら数万円で済むこともありますが、家族向けの広い家になると数十万円単位の費用がかかることが一般的です。

以下の表は、部屋の広さごとの費用目安をまとめたものです。

部屋の広さ	費用の目安	特徴
1K	3万円〜8万円	単身者の荷物量。家具が少なければ安く済む傾向にあります。
2LDK	9万円〜25万円	二人暮らし以上の荷物量。部屋数が増える分、作業時間が長くなります。
3LDK	15万円〜40万円	ファミリー世帯の荷物量。大型家具が多く、搬出に人手が必要です。

このように金額に大きな幅があるのは、部屋に残っている荷物の量や種類によって、片付けの手間が大きく変わるためです。

いわゆる「ゴミ屋敷」のように足の踏み場もない状態だと、上記の目安の数倍の費用がかかることもあります。

この表の数字はあくまで目安と考え、正確な金額を知るためには必ず業者に現地を見てもらうようにしましょう。

費用（2）基本料金・人件費・処分費の仕組み

撤去費用の総額は、主に「ゴミの体積」と「作業にかかる手間」の組み合わせで計算されます。

専門的な計算方法としては、立米（りゅうべい）という体積の単位を使います。

1立米あたり4,000円から1万5,000円程度の処分費がかかり、そこにトラックの車両費や作業員の人件費がプラスされるのが基本の仕組みです。

イメージとしては、お風呂の浴槽1杯分くらいのゴミで数千円から1万円以上の処分費がかかると考えてください。

つまり、部屋にある荷物が多ければ多いほど、また分別作業が難しいほど料金は高くなります。

業者によって「トラック1台でいくら」というパック料金を設定しているところもあれば、細かく計算するところもあります。

見積書をもらったときは、合計金額だけでなく「何にいくらかかっているのか」という内訳をしっかり確認することが大切です。

費用（3）追加料金が発生する現場の条件

基本料金とは別に、建物の状況や作業の難しさによって追加料金が発生することがあります。

よくあるのが、マンションやアパートでエレベーターがなく、階段を使って荷物を運ばなければならないケースです。

この場合、「階段作業費」として階数が上がるごとに費用が加算されるのが一般的です。

また、トラックを建物のすぐ近くに停められず、長い距離を手作業で運ぶ必要がある場合も「横持ち料金」と呼ばれる追加費用がかかることがあります。

これらを知らずに依頼すると、作業当日になってから追加料金を請求されてトラブルになる可能性があります。

ご自身の実家や物件が以下のような条件に当てはまる場合は注意が必要です。

費用（4）「一式」見積もりのリスクと確認方法

見積書をもらったとき、最も注意してほしいのが「作業一式 〇〇万円」という書き方です。

これは、人件費や処分費などの細かい内訳を書かずに、合計金額だけを提示する方法です。

なぜなら、作業の内容がはっきりしていないため、後から「これは別料金です」と言われて追加請求されるリスクがあるからです。

優良な業者は、お客様に納得してもらうために、どの作業にいくらかかるのかを必ず細かく記載します。

「一式」とだけ書かれた見積書を渡された場合は、そのまま契約してはいけません。

「処分費はいくらですか？」「人件費は何人分ですか？」と具体的な内訳を質問するか、別の業者にも見積もりをお願いして比較することをお勧めします。

残置物撤去費用を安く抑える方法

「業者の見積もりが予想以上に高かった」と驚く方は非常に多いです。

実は、撤去費用は「ゴミの量」と「作業の手間」で決まるため、すべてを業者任せにせず、自分で減らせる部分は減らしておくことが最大の節約になります。

特に、自治体のサービスをうまく活用したり、売れるものを事前に手放したりすることで、数万円から十数万円単位で費用を浮かせることが可能です。

方法（1）自治体のゴミ収集で処分量を減らす

最も確実で効果的なコスト削減方法は、自治体のゴミ収集をフル活用することです。

業者に依頼すると、たとえ一般的な生活ゴミであっても、分別や運搬の人件費がかかるため費用が高くなります。

一方で、自分で燃えるゴミや燃えないゴミ、資源ゴミ（瓶・缶・ペットボトル・古紙）として出せば、費用は指定のゴミ袋代程度で済みます。

特に、液体が入ったペットボトルや中身の残ったスプレー缶が混ざっていると、業者の分別作業が増えて追加費用の原因になります。

少し手間はかかりますが、これらを自分で捨てるだけで大幅な節約につながります。

方法（2）家電リサイクル対象品を正しく処分する

エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目は、「家電リサイクル法」という法律により、捨てる際にリサイクル料金を支払うことが義務付けられています。

業者にこれらを依頼すると、法律で決まっているリサイクル料金に加え、「収集運搬費」という名目で数千円からの手数料が上乗せされるのが一般的です。

以下の表は、必ずかかるリサイクル料金の目安です。

品目	リサイクル料金（税込）
エアコン	972円〜
テレビ	1,386円〜
洗濯機	2,484円〜
冷蔵庫	3,672円〜

もし車の手配ができて自分で運べるなら、郵便局でリサイクル券を購入し、地域の「指定引取場所」へ直接持ち込むことをお勧めします。

これにより、業者に支払う運搬費をカットでき、確実なコストダウンになります。

方法（3）買取可能な家具・家電を事前に売却する

ゴミだと思っていたものでも、製造から5年以内の家電やブランド家具などは、リサイクルショップで買い取ってもらえる可能性があります。

これを「有価物の買取」といい、撤去費用から買取金額を差し引くことでトータルの支払額を減らすことができます。

メルカリやジモティーなどの個人間取引アプリを使えばさらに高く売れることもありますが、売れるまでに時間がかかる点がネックです。

退去期限が迫っている場合は、すぐに出張買取に来てくれる専門業者やリサイクルショップを利用するのが賢い選択です。

方法（4）複数業者から相見積もりをとる

費用を適正価格に抑えるためには、最低でも3社から見積もりを取る「相見積もり」が不可欠です。

なぜなら、残置物撤去には定価がなく、業者によって料金設定が大きく異なるからです。

1社だけで決めてしまうと、相場より高い金額を請求されても気づけません。

複数の業者に現地を見てもらい、見積もりを比較することで、一番条件の良い業者を選べるだけでなく、「他社はこの金額だった」と交渉する材料にもなります。

方法（5）搬出経路を確保し作業時間を短縮する

業者の見積もり金額は、当日の作業にかかる時間や手間によっても変動します。

例えば、トラックを玄関の近くに停められず、長い距離を手作業で運ぶ必要がある場合、「横持ち料金」と呼ばれる追加費用が発生することがあります。

これを防ぐために、事前に駐車スペースを確保したり、玄関周りの障害物をどかしておいたりするだけでも節約効果があります。

また、細かいゴミを分別してまとめておくだけでも作業時間が短縮され、結果として値引き交渉に応じてもらいやすくなります。

残置物撤去の所要期間とスケジュール

「引き渡し日までに間に合うだろうか」と不安になる方は多いですが、残置物の撤去は電話一本ですぐに終わるものではありません。

一般的には、問い合わせをしてから作業が完了するまでに、最短でも3日から1週間程度の期間が必要です。

なぜなら、正確な金額を出すために現地でゴミの量を確認する「現地見積もり」という工程が必ず発生するからです。

特に引越しのシーズンなどは予約が取りにくく、希望日が2週間以上先になってしまうことも珍しくありません。

期限が決まっている場合は、余裕を持ってスケジュールを組むことが大切です。

期間（1）見積もりから作業完了までの標準日数

作業完了までの期間は、最初の問い合わせから数えて3日から1週間程度を見ておくのが基本です。

多くの人が「電話すればすぐに回収に来てくれる」と考えがちですが、実際には「現地調査（見積もり）」→「契約」→「作業当日」という3つのステップを踏む必要があります。

もし急ぎで「即日対応」を謳う業者に依頼する場合、足元を見られて割高な料金を請求されるリスクもあります。

トラブルを避けるためにも、少なくとも1週間前には行動を開始することをお勧めします。

期間（2）間取り・荷物量別の作業日数の目安

作業にかかる日数は、部屋の広さと片付ける荷物の量によって大きく変わります。

一人暮らしの部屋なら1日で終わることも多いですが、一軒家丸ごとの片付けとなると数日かかることが一般的です。

以下の表は、間取りごとの作業日数の目安をまとめたものです。

間取り・状況	作業日数の目安	備考
1K・1R	半日〜1日	単身者の荷物量。搬出経路が確保できればスムーズに終わります。
3LDK・一軒家	2日〜3日以上	部屋数が多く、家族全員分の荷物があるため日数がかかります。
ゴミ屋敷状態	1週間近く	足の踏み場もない状態では、分別の手間がかかるため長期化します。

表の通り、いわゆる「ゴミ屋敷」のように大量の不用品が積み上がっている状態では、分別作業に膨大な時間がかかるため、作業期間は1週間近くに及ぶこともあります。

ただし、スタッフの人数を増やして短期間で終わらせる相談が可能な場合もあるため、期限が迫っている方は見積もりの際に相談してみましょう。

期間（3）繁忙期や土日祝日に依頼する場合

引越しシーズンである3月から4月や、年末の大掃除シーズンに依頼する場合は、通常よりもさらに早めの予約が必要です。

この時期は業者のスケジュールが非常に混み合い、予約が埋まり始めるのが早いため、希望日の1ヶ月前には問い合わせておく必要があります。

直前になって慌てて電話をしても、どこの業者にも断られてしまうケースが後を絶ちません。

もし日程の調整がつくのであれば、比較的予約が取りやすい平日や、繁忙期を避けた時期に依頼することで、スムーズに作業を進めることができます。

失敗しない残置物撤去業者の選び方

残置物撤去で最も避けたいのは、悪徳業者によるトラブルです。

「無料回収」という甘い言葉に乗って依頼したら、荷物をトラックに積んだ後で高額な料金を請求されたり、回収されたゴミを山林に不法投棄されたりする被害が後を絶ちません。

こうしたトラブルに巻き込まれないためには、業者が持っている「許可」や「契約時の対応」を自分の目で厳しくチェックすることが不可欠です。

ここでは、優良な業者を見極めるために確認すべき4つのポイントを紹介します。

選び方（1）一般廃棄物収集運搬業許可の有無

業者選びで最初に確認すべきなのは、「一般廃棄物収集運搬業許可」を持っているかどうかです。

家庭から出るゴミ（残置物）を回収・運搬するには、この許可が法律で必須とされています。

よく似た名前に「産業廃棄物収集運搬業許可」や「古物商許可」がありますが、これらだけでは家庭のゴミを運ぶことはできません。

許可の種類とできることを以下の表にまとめました。

許可の種類	家庭ゴミの回収	備考
一般廃棄物収集運搬業許可	〇（可能）	家庭の廃品回収に必須。取得が非常に難しい許可です。
産業廃棄物収集運搬業許可	×（不可）	工場のゴミなどが対象。家庭ゴミの回収は違法になります。
古物商許可	×（不可）	「買取」のみ可能。ゴミとして処分することはできません。

多くの無許可業者は、取得が簡単な「産業廃棄物」や「古物商」の許可だけで営業しているのが実態です。

依頼する際は、ホームページや電話で「一般廃棄物の許可を持っていますか？」「もしくは許可を持つ業者と提携していますか？」と必ず確認してください。

選び方（2）マニフェスト管理による不法投棄対策

不法投棄のリスクを避けるために重要なのが、「マニフェスト（産業廃棄物管理票）」の発行です。

これは、回収した廃棄物が「いつ」「誰によって」「どこで」処分されたかを記録する伝票のことです。

もし業者がゴミを山などに不法投棄した場合、依頼主であるあなたも法律で責任を問われる可能性があります。

しかし、マニフェストがあれば、ゴミが最終処分場まで適正に運ばれたことを証明できます。

契約時に「マニフェストの写しをもらえますか？」と聞き、快く対応してくれる業者は、法律を守る意識が高い信頼できる業者と言えます。

選び方（3）現地見積もり時の対応と説明の丁寧さ

電話やメールだけで「〇〇円でやります」と安易に見積もりを出す業者は危険です。

なぜなら、残置物の正確な量や搬出の難しさは、現地を見なければ判断できないからです。

必ず現地訪問をして見積もりをとる業者を選びましょう。その際、スタッフが「なぜこの金額になるのか」を納得いくまで説明してくれるかどうかも、優良業者を見極める重要なポイントです。

選び方（4）契約書のキャンセル規定と追加料金条項

契約を結ぶ前に、必ず「キャンセル料」と「追加料金」に関するルールを書面で確認してください。

悪質な業者は、口約束だけで作業を進めようとし、トラブルになった際に「キャンセル料は100%だ」「契約書には書いていないが追加料金がかかる」と強引な主張をしてきます。

特に、「いつからキャンセル料が発生するのか」や「どのような場合に追加料金がかかるのか」が明記されている契約書を交わすことが、自分自身を守ることにつながります。

書面での契約を拒む業者は、その時点で候補から外すべきです。

撤去前に確認すべき法的権利と義務

残置物の撤去は、単にゴミを捨てれば良いという単純な話ではありません。

特に賃貸や相続、解体が絡む場合、法律上の「権利」や「義務」を無視して進めると、後から損害賠償を請求されるなどの深刻なトラブルに発展する恐れがあります。

「誰が費用を負担するのか」「勝手に捨てて良いのか」、作業を始める前に必ずクリアにすべき4つの法的ポイントを、専門用語を噛み砕いて解説します。

確認事項（1）賃貸トラブル時の連帯保証人の責任

「家賃を滞納した入居者が夜逃げをしたので、すぐに荷物を処分したい」という相談は後を絶ちません。

しかし、たとえ滞納があっても、部屋にある荷物の所有権は入居者にあります。

まずは、入居者の代わりに責任を負う「連帯保証人」に連絡を取り、契約解除や明け渡しの手続きを進めるのが鉄則です。

国土交通省は、こうした事態に備えて「残置物事務受任者」という、万が一の時に荷物の処理を任せられる人を決めておく契約モデルを推奨しています。

トラブルを未然に防ぐためにも、こうした公的なガイドラインに沿った対応が求められます。

確認事項（2）相続物件の費用負担者は誰になるか

親が亡くなり実家が空き家になった場合、片付け費用を「親の遺産から出すか」「子供が自腹で払うか」で親族間のトラブルになりがちです。

ここで重要なのが、通帳や実印、権利証（不動産の持ち主であることを証明する書類）などの重要書類を確保することです。

これらを誤って捨ててしまうと、遺産の状況が分からなくなり、費用負担の話し合いも進まなくなります。

専門の知識を持つ遺品整理士がいる業者などに依頼し、単なるゴミ処分ではなく、財産の「探索」を行うことが、相続トラブルを避けるための最重要ミッションとなります。

確認事項（3）勝手に処分すると違法になるケース

所有者の許可なく荷物を撤去・処分することを、法的に「自力救済（じりききゅうさい）」と呼び、原則として禁止されています。

過去の裁判では、賃貸契約書に「荷物は勝手に処分できる」と書いてあっても、その条項自体が「消費者契約法第10条（消費者に一方的に不利な契約は無効）」に違反するとして、無効になったケースがあります。

つまり、相手と連絡が取れないからといって強引に片付けると、逆に訴えられるリスクがあるのです。

法的な手続き（強制執行など）を踏まずに処分することは絶対に避けてください。

確認事項（4）解体・売却時に必要な撤去範囲

家を解体する場合、「どこまで片付ければ良いか」を間違えると数十万円の損をすることがあります。

実は、畳や建具などは「建物の一部」として解体業者が一緒に処分した方が安く済むケースが多いのです。

逆に、生活ゴミが残っていると「混合廃棄物」となり、処分費用が跳ね上がってしまいます。

自分で撤去すべきものと、残して良いものの区分は以下の通りです。

区分	主な品目	対応のポイント
残して良いもの（解体工事で処分）	畳、ふすま、障子、作り付けの棚、浴槽、洗面台、照明器具、換気扇	これらは解体費用に含まれることが多いため、無理に撤去する必要はありません。
撤去すべきもの（事前に処分）	衣類、布団、カーペット、紙くず、生ゴミ、プラスチック容器、調味料、スプレー缶	これらが残っていると処分単価が高騰します。特に液体や危険物は必ず撤去しましょう。

このように、解体業者に任せるものと自分で捨てるものを明確に分けることが、総額コストを抑えるための賢い戦略です。

まとめ

残置物を撤去する際は、費用相場を把握し、複数業者から相見積もりを取ることが適正価格で依頼するための第一歩です。

見積書では「一式」表記を避け、処分費や人件費の内訳を必ず確認しましょう。

業者選びでは一般廃棄物収集運搬業許可の有無をチェックし、現地見積もりで丁寧に説明してくれるところを選ぶと安心です。

正しい知識を身につけ、信頼できる業者に依頼すれば、トラブルなく物件を空にして次のライフステージへ進むことができます。